「iWall構法」による蓄熱の意味は?
住宅が「穴の空いたバケツ」だったら?
住宅の熱収支を直感的に理解するために一つの物理モデルを導入す ることにしましょう。
「下部に穴の開いたバケツ」を想像してみてください。このモデル ではバケツへの水の出入りとバケツの中の水位が、住宅内での熱の 振る舞いと温熱環境を表しています。
バケツの上部には蛇口があって任意の量の水(熱)を供給すること ができます。蛇口は室内に供給する熱の経路を表しており、水 (熱)源には暖房装置、日射熱や生活に伴う排熱などがあります。 日射や内部発生熱をうまく活用できれば暖房装置の稼働量を抑えら れますから、エネルギーの使用量が削減できることになるわけです。
ではどうやって日射熱を環境改善に利用すれば良いのでしょうか?
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高断熱・高気密化は『バケツの穴をふさぐ作業』です。
バケツの底部には穴が空いていますので、穴の大きさと水の供給量 によって水位(室温)は決まります。バケツの底がザルならば、ど んなに大量の水を供給しても水は溜まりません。断熱性能の低い家 や無断熱の家は底の抜けたバケツのようなものですから、任意の水 位(室温)を維持することはできないのです。
これまで多くの専門家が努力と工夫を積み重ねてきた住宅の高断熱・ 高気密化技術はバケツの穴をできるだけ小さくして、好みの水位 (室温)を簡単に維持できるようにする活動だった、ということが できるかもしれません。
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「バケツの大きさ」がこれからの課題。
バケツの穴をできるだけ小さくして、少量の給水で高い水位(室温) を維持することが可能になった現在の高断熱・高気密住宅にも新た な課題があります。それはバケツの容量に原因があります。
バケツの容量が小さいと晴天日に日射熱(水)が急激に供給された 時には、バケツの水位が思わぬ上昇をしてしまいます。断熱性能の 低い家では生じることがなかった「意図しない急激な室温上昇(過 昇温)」が生じ、これがきっかけで相対湿度が過度に低下してしま う原因になっているのです。
人間の健康にとって好ましい相対湿度の範囲は40から60%程度で あると言われています。この範囲を逸脱するとウイルスや病原菌が 繁殖しやすくなり咽頭部や気管が乾燥して風邪をひく原因にもなり ます。それではバケツの容量を増やすには、どのようにしたら良い のでしょうか?
「e -プラスター」がバケツの大きさを容易に拡大する。
物理学ではこのバケツの大きさのことを熱容量と呼んでいます。 バケツへの水の供給量と排出量が常に同じであれば(定常状態)、 バケツの容量に関係なく水位は一定に保たれます。しかし、外気温 度や日射量は天候によって常に変化していますので、室温もこれに 連れて変化してしまいます。バケツの容量が大きいと水の需給関係 が一時的に崩れても、バケツがバッファーの役割をしますから、安 定した水位(室温)を維持することができるのです。
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それではバケツの容量を増すための方法にはどのようなものがある のでしょうか? 石造りの家や土蔵は安定した室温が得られるので、古くから気候の 厳しい地方の住宅や貯蔵施設の構法として広く普及してきました。 土蔵やワインセラー、蔵座敷などが代表例ですね。
コンクリート造の建物もこれと同様の特徴を持っています。それで は木造住宅でバケツの容量を増す方法はないのでしょうか?「e -プ ラスター」は熱容量に恵まれない木造の高断熱・高気密住宅の室内 環境を安定させるために開発された技術です。
「e -プラスター」は快適な室温範囲で生じる温度変化でも、融解と 凝固を繰り返しながら多くの熱を蓄積することのできる材料です。 最近では保温性の高い衣服や自動車のエアコン部品としても利用さ れている潜熱蓄熱材。レンガやコンクリートに比べて、少ない温度 変化でも住宅の蓄熱性能を圧倒的に高めることができるという特徴 があります。この潜熱蓄熱材を室内の仕上げ材料として施工するこ とで、木造住宅の熱容量は容易に増大させることができます。
熱容量が健康と省エネルギーな暮らしをサポートする。
室内の熱容量(バケツの容量)を大きくするとどんな効果が期待で きるのでしょうか?もう一度考えてみましょう。
秋から冬、そして春にかけての晴天日、太陽高度が夏より低いこの 季節には部屋の奥深くまで日射が差し込んできますが、熱容量の小 さな家にとって強力な日射は過昇温を招く厄介者にすぎません。
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熱容量の大きな家では日射熱を壁、床、天井などの躯体に貯め込み、 夜間の暖房用の熱源として利用することができるようになります。 同時に室温(水位)の変動は抑制されて安定しますので、過乾燥に よって健康に被害が出ることも予防することができます。まさに一 石二鳥の効果が期待できるのです。
高断熱・高気密の先にある「高蓄熱住宅」への期待。
北日本ばかりでなく東日本や近畿、九州を含む西日本でも「寒冷な 冬季」を気候的特色に持つ日本。しかし西欧などと比較して低緯度 地域に位置するという地理的な特徴を生かして、環境調整のために 日射を利用することは、古来から日本の伝統的家屋に見られる普遍 的な技術です。
四季折々の変化を楽しませてくれる安定した室内環境づくり。
室内が寒すぎたり暑すぎたりしては、本当の意味で四季を楽しむこ とは不可能です。ゼロ・エネルギーハウスの構築が実現可能性を帯 びてきた現代の住居に求められる健康・快適な暮らしとは?
さらに、居るだけで「学びたくなる」なるような、「知的な活動を したくなる」ような創造性にあふれた家づくりのベースとなる室内 気候を提供できる時代が、ようやく到来したと言えるのかもしれま せん。